「新聞究所施設の実情調査ならびに整備の必要性について」教育部に関する記述の抜粋

「新聞究所施設の実情調査ならびに整備の必要性について」教育部に関する記述の抜粋

   昭和51年度. - [東京] : 東京大学 , [1976] 

 

2 新聞研究所の概要

(2) - 2 教育部

国立学校設置法による新聞研究所の設置目的をうけ、大学前期課程修了以上の資格をもつ者を、毎年研究生として選抜入学させ、マス・コミュニケーションに関する教育を行っている。

 

  1. 新聞研究所の特殊性

(3) 教育部について

新聞研究所で組織上最も特色のあるものは教育部である。国立学校設置

法による新聞研究所の目的を再掲すると「新聞及び時事についての出版、

放送および映画に関する研究並びにこれらの事業に従事し、又は従事しよ

うとする者の指導及び養成」となっており、この後段の規定をうけて東京

大学新聞研究所教育部規則(別添参照)が制定され、主として大学の後期

課程に在学する者を対象に、研究生を募集し、1 学年定員5 0 人、修業年

限2 年の専門課程教育を行なっている。

この場合最も重要なことは、名称が研究生となっているため、一般の研

究所における研究生の受け入れと混同されることである。これは研究所の

性質上研究生となっているだけで、その実体は、①設置法に明記された業

務であること、②別添の新聞研究所教育部規則は、他の学部規則となんら

変るところがないこと、③学科課程、履修単位も明確に定められているこ

と、④予算上学生経費も配当されていること、⑥卒業生はほとんど一流新

聞社又は放送会社に就職していること等によって証明されるように、一般

の学部専門課程教育とまったく同様である。

全国の附置研究所において、新聞研究所と同様の設置規定をもっている

のは、東京外国語大学のアジア・アフリカ言語文化研究所であるが、同研

究所の設置目的には、「アジア及びアフリカの言語文化に関する総合研究

並びにこれらの地域の言語に関する辞典の編成及び教育訓練」と設置目的

に述べられている。しかし、この規定をうけて定められている東京外国語

大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究生規定は、一般の研究生規定と

同様で、新聞研究所と同種のものではない。

ここで新聞研究所の研究生制度について、なにゆえに学部教育とは別に、

このような制度が発足したかその事情を説明しておく。

新聞研究所は、昭和4 年文学部に特設された新聞研究室をその前身とし、

戦後昭和2 4 年に正式の附置研究所として設置された。新聞研究室時代に

おいても、法・文・経の3 学部の学生から選抜して研究生を採用し、新聞

学に関する特別の専門教育を実施する制度がとられていた。戦後、この新

聞研究室が新関研究所に発展するに際して、研究生制度のあり方が改めて

東京大学と文部省の間で論議された。当時、民主主義国家として新生した

日本の健全な発展のために、言論報道機関の役割りの重要性が強調され、

そのため、これに従事するジャーナリズム教育の必要性が論じられていた。

その論点は、このようなジャーナリズム教育を、ジャーナリズム学部もし

くは学科の形で行なうか、または別途の方法によるかという問題であった。

その結果、学部もしくは学科の形によるジャーナリズム専門教育は、ジャ

ーナリズム教育の方法としては必ずしも適当でなく、むしろ、個々の学問

の専門分野に関する基礎的素養を身につけた者で将来ジャーナリストたら

んとする者に対して、特別にジャーナリズムに関する専門教育を行なう

ことが適当であるという方針が立てられた。そして、具体的な方法としては、

大学前期課程を修了し後期専門課程に在学する者のうちから志願者を募り、

ジャーナリズム専門教育を各学部教育と並行して特別に実施することとなった。

これが研究生制度発足の事情である。

研究生制度は、一面においては、新聞研究室時代の研究生制度の継承と

いう意味をもっているが、新制度は、法・文・経3 学部だけでなく、すべ

ての専門学部の学生に開かれており、かつ、東京大学だけでなく、他の国

公私立大学の学生(たとえば、東京外国語大学東京教育大学、早稲田大

学、慶応大学など)にも開かれている。したがって、研究生は、東京大学

あるいは他大学の専門課程に 在籍する学生であると同時に新聞研究所教育

部研究生であるという二重身分をもっている。

この新聞研究所教育部の研究生制度は、わが国の国立大学における唯一

のジャーナリズム専門教育制度として独特の存在意義をもっており、国際

的にも今日では広く知られている。

なお、施設問題とは直接関係ないが、新聞研究所の特殊性として言及す

れば、大学院教育において、社会学研究科の社会学専門課程B 新聞学コー

スを、この研究所において独自侭学科課程を編成し担当していることであ

る。

以上のように、研究所でありながら学生教育を直接担当しているため、

狭溢な面積を講義室、演習室にさかなければならない状態であり、会議室

も講義室、演習室として使用される度合いがより高いという状況である。

また、事務部に教務掛が設けられているのも、これらの事情を反映したも

のである。